静かに想う、想いは灯に。 蝋燭の灯りを見て、 私は何を想うか。 Last week-7 謳いましょう想いましょう- 片翼だけの天使は 何処か寂しげな瞳で ただ空を仰ぐだけなの あなたを想いながらも 懐かしい匂いがした 私の中に眠りつく いつも走り回っていた あの場所はもうないけど ただ伝えたいのあなたに 私の言葉をひとつ ただ捧げたいのあなたに 私の羽根をひとつ 胸の奥のその奥に ひとつだけ光がある 片翼の天使の翼を もぎとって空に仰ぐ

謳が消えていくと共に、 蝋燭の灯りが消えていく。 ブランコが揺れる。 それと同時に私は目を閉じた。 最後の灯りで確認した時計は 多分9時30分ぐらいを指していた。 灯りが無くなった今、目を開けていても何も見えない。 目を閉じて、もう一度口ずさむ。 お父さんお母さん、クラスメイトの顔が、 浮かんでは消える。 そして、多紀の顔が浮かんで、 「秕奈」 離れない。 「秕奈」 この声が、離れない。 あぁ、あなたの声を聞きたい。 何が怖い? 何が、恐いって? 私の中から、私が消える事が。 あなたが消える事が。 温もりが消えてしまうのが、こわい。 神様、私は望み過ぎましたか? 神様、私は願ってもいいですか? 多紀に会いたい、と。 抱き締めて欲しい、 名前を呼んで欲しい、と。 「おめでとう。」と伝えてはいけませんか? 「寒いなぁ。」 だんだんと、目が重くなってくる。

「多紀、おめでとう。 生まれてきてくれてありがとう。 私、幸せだった、多紀のいる、この地球が、大好きだった。 きっと私達はまた、どこかで会える。絶対に。」 風が吹いた。 ありえないほどの風が。 目を開けることは出来なかった。 けど、私はその思いと共に空へ飛んだ。 片翼だけの、不安定なままで。