そうだ、そうだ。 結局人ってのは自分の事ばっかりで、 相手の都合なんて、考えないんだから。 だけど、それでも 会えると思ってたんだよ。 Last week-7 還ろうか-
彼の家に、彼は居なかった。 きっと、家族で最後を迎えるんだろう。 だけど、私は悔やんでる? ううん。 多紀が居なくても、この日本で、地球で、 「おめでとう。」言える私は絶対幸せなのだ。 「家に、帰ろう。」 多紀の家に、一言。 「またね。」 呟いて私は、自分の家に向った。 辺りは暗く、家の壁を触りながら歩かないと、 ここから奥にはもう外灯はない。 何処に居るか、分からなくなってしまう。 だけど私は、道の真ん中を歩く。 何度も歩いた、私の家から多紀の家までの道。 忘れるわけが、 分からないはずが無い。 きっと、目をつぶっても行ける。 自信がある。 「ただいま。」 ほら、公園が見えた。 その前が私の家。 ポケットから、家の鍵を取り出し、差し込む。 暗くて、さすがに分からなくてカチ、カチと、失敗した。 学校から帰ってきたら、お母さんもう帰ってきてたし・・・。 ガチャ、と開いた音が懐かしかった。 「ただいま。」 もう一度行った。 暗い廊下に続く玄関で。 電気はつかなかった。 電力会社ももう止まっているのか、 そう思いながらスイッチをカチカチしていると、電気がついた。 白く輝いた。 少ないながらも電流が流れているようだ。 だから、電気は玄関だけ付けて、そのか細い光を 頼りに家にあがる。 台所の戸棚から、非常用の蝋燭を取り出して、 マッチで灯りをつける。 マッチ箱と蝋燭を持って、台所を後にして、 玄関に向った。 他の蝋燭は持っていかなかった。 手に持った蝋燭はお父さんとお母さんの結婚式の時の蝋燭。 大きい蝋燭だから、多分これが燃え尽きる頃には・・・。 家を出て、公園に入った。 蝋燭の灯りを頼りに、ブランコに座った。 蝋燭の灯りが、大きく揺れた。 灯りに透かして腕時計を見る、 あと、二時間。何時の間にか時が過ぎていた。 次