シートベルト着用のランプが消えて。 慌てて立って。 スチュワードさんとパイロットさんに手を振った。 Last week-7 願いは果かなく-
エアポートを飛び出す。 バスも、タクシーも走っていない。 ただ見えるのは、信号を無視して暴走する車。 時計は無情にも刻々と時を刻む。 午後四時のこと。 あと、6時間。 「そだ、電車、電車は・・・!」 無人で、コンピュータ制の電車なら、動いているはずだ。 エアポートを走る。 人少ない空港に私の靴が走る。 駅の改札口には誰も居ない。 止まってる暇も惜しい。 自動改札気を飛び越えた。 「良かった、動いてる。」 ホームに走りこんで乗る。 発車までのたった3分がもどかしい。 「大丈夫、間に合うわ。」 もうすぐ、あなたに会える。 見慣れたホームに、いつも人がたくさんいるはずが、 人は確認できても数えるほど。 辺りは人々のざわめきが、膨大な雑音となり、耳に飛び込んでくる。 耳が、壊れる。 改札口を越えると、もっと大きくなった。 人々はテレビ局に押し寄せている。 きっと国会とかすごいんだろうな、とか思いながら テレビ局とは反対の方向へ走る。 声がだんだん小さくなる。 走りこんだ住宅街も、恐ろしいほど人気が無くて、 ただ、時々すすり泣く声が家から聞こえた。 それを聞くと、私も涙がこぼれそうになった。 必死になって堪える。 あと、少しだから。 涙よ、流れないで。 流れたら前が見えないでしょう。 見えないから。 「見えた・・・。」 家が見えた。 家の前に立った。 この時初めて疲れを感じた。 眩暈がした・・・。 チャイムを鳴らす。 だけど、いくら待っても 多紀も、多紀の家族の人も、出 て こ な か っ た 。 次