宝物を持って、宇宙に飛び出そう。 大切なモノを持って、飛び出そう。 誰もが夢見る、宇宙の果て。 だけど。 本当に大切なモノは、持っていけるモノじゃないんだ。 本当は、ね。 Last week-4 to 3-

「私、明日アメリカへ行くの。」 「は?」 「お母さん、お父さん。そして私はスペースセンターに、逃げるの。 たった一つだけ許された、大切なモノを持って。」 「そうか、秕奈のお父さん、宇宙飛行士だっけ。 確かに、今ここで全てが滅びるわけには行かないから・・・。」 観覧車がガタン、と揺れた。 闇に服、風。 それは闇を運ぶのか、違うのか。 「それでも私は行かないよ。ここに残る。」 「秕奈?何言ってんだ。」 「私の大切なモノ、は多紀と会えた、全ての必然と、 この地球、そのものだから・・・。持って・・・行けないでしょう?」 「秕奈、お前馬鹿だよな。分かってたけど・・・、でも、最高。 俺はお前に死んで欲しくないよ。けど、俺の居ない場所で泣いて欲しくない。」 「行かないよ。離れたくないから。」 「行くなよ。離れたくない。」 二人が願うは、最後まで二人で居られる事を。 闇に漂う二つの光になること。 「楽しかったよ、ありがと。」 「明日は学校、行かないとな!」 多紀は、いたずらをした時みたいに笑った。 「また明日。」 「また明日、ね。」 公園まで送ってもらって、遠ざかる多紀の背中をしばらく見つめた後、 私も家に入る。 「ただいまー。」 「おかえり、秕奈。」 出迎えてくれたのは、 「お父さん・・・。」 「お帰り。」 お父さんが帰ってきた。 ということはやっぱり、これは現実であり。 迎えにきたんだ。 「お父さん、ごめんなさい・・・私、明日一緒に行けない。」 「秕奈、馬鹿な事を言うな。」 「確かに、お父さんもお母さんも大好きよ。大好きよ・・・、だけど。 多紀には勝てない。私は居場所をやっと見つけたの。」 「それは、死にに行くというのか。」 「違う、ただ普通に生活して、普通に終わりたいだけ。 私だって生きたい。もっと多紀と、居たい。」 「地球が消えて、無くなるんだぞ。」 「分かってる、怖いよ、けど・・・。」 「もういい。」 そう、お父さんはそう言うと奥へと言ってしまった。 ごめんなさい、ごめんなさい。 もう、明日からは会えない。 声も聞けない。 聞こえない。 けどね、怒ってもね、お父さん大好き。 お母さん大好き。 だって、私が多紀に会えたのは、暖かい夫婦のおかげだもん。 けどね、今一番大切なのは、家族じゃない。 多紀という愛する人。

ただそれだけ。